パラサイト 半地下の家族(2020.3.23)

アジア映画として史上初のアカデミー賞4部門を受賞して話題になっています。
実は、この映画、私は、受賞になるずっと前、封切直後に、観ていました。
私は、正直、上映中、この映画を見ているのが辛かった。
確かに、その脚本は、格差社会を問題提起するもので、奇想天外な展開もあり、観る者に飽きさせない、内容の濃い作品である。
しかし、貧者が金持ちを騙して、平気でいることの構成が、どうしても、私の肌にあわなかった。
貧しくとも、清廉潔白であって欲しいという私の感性が、この映画を心から楽しむことを邪魔した。
被害者がいない「騙し」は楽しめるが、実害が出る「騙し」相手に心の傷が残る「騙し」は、楽しめることはできない。
日々、紛争に対面している弁護士としての性か、被害者に目がいってしまう。
金持ちも金持ちの人生があるわけで、当然、騙されていいわけはない。
もしかしたら、監督は、私のような見方をする者の存在を前提として、ストーリーを構成しているのかもしれない。
そう考えると、いろいろ考えさせる映画であり、なかなかの作品といえる。
現在、新型コロナで映画館には、閑古鳥が鳴いているということですが、皆さんも是非観ていただきたいと思います。

忍法、身代わりの術(2020.3.23)

世の中、不合理なことだらけです。茨木太陽は、そんな所を照らし出し、世に訴えたいと思います。ぼやき漫才 人生幸朗さんが如く、茨木太陽がぼやきます。「ばか者!!責任者出てこい!!」
えっ!!人生幸朗(じんせい こうろ)さんをご存じない…。昭和漫才の大御所です。是非、YouTubeで検索ください。知らなきゃ損。
さて、本日は…

忍法、身代わりの術

皆さん、世の中おかしい事だらけですが、我が業界で、びっくりの事が起こりました。
我が業界では、弁護士会が会員弁護士に懲戒処分する事があります。弁護士にとって、弁護会の処分は、とても怖いのです。弁護士は、どこかの弁護士会に所属していないと、弁護士として活動できません。医師会は任意加入団体ですが、弁護士会は、強制加入団体です。弁護士会で、退会処分を受けると、事実上、別の弁護士会(全国52会あります)でも、加入が認められないので、弁護士廃業ということになります。業務停止1ヶ月という処分でも、「たった一ヶ月、夏休みみたいなものね」というわけにはいきません。一切の弁護士業務をしてはならないのです。顧問契約は、全て、解消し、受けている案件も全て辞任、看板もネットでの広告も禁止、正に、「閉門蟄居」という事になりますので、業務停止後、元の状態に戻るまで時間がかかります。
 2017年にA法律事務所が2ヶ月の業務停止になったときは、大変でした。10万人も契約者がいたので、その後処理は、大変でした。業務停止の理由が、景品表示法違反でしたので、処分としては、やや重すぎる様に思います。「戒告」にして、再び、問題行動があるときに「業務停止」すべきでは無かったかと思います。
 先日、テレビやネット広告で有名な弁護士法人、B事務所が「業務停止6ヶ月」の処分が下りました。過払い提携司法書士に対し、紹介料を払ったというものです。
 紹介料であったか、労力に対する対価であったか争われ、今後もその点について、審議が続くようなので、この点については、ノーコメントとしたいと思います。
 しかし、びっくりしたのは、懲戒請求がなされてから、一般的には区別の付かない、ほぼ、同名の別法人を作り、登録弁護士も全て、別法人に移しました。元の弁護士法人は、もぬけの空の状態。業務停止命令後も普通にテレビCMしており、HP上も、懲戒処分を受けたのは、別の法人ですので、ご心配なくとの記載がなされています。
 私が、子供の頃、忍者「カムイ」では、よく、こんなシーンがありました。手裏剣に当たって倒れたと思ったら、服が着せられている木に手裏剣が刺さっている。
「忍法、身代わりの術~」。
  詐欺会社がよくやる手法です。危なくなったら別会社作って、同じ事する。詐欺会社は、名前は変えますが…。
 また、倒産手法に、別法人作る一方、借金まみれの法人名を別の名前に名称変更し、新法人に元の名称の商号を名乗らせる。別名にした元の法人は、破産をする。
 一般の消費者は、今までなじんでいた〇〇会社は実は、倒産しているなんて、気付かずに 依然と同様〇〇会社と取引します。
 正に、こんな事を弁護士がしているのです。個人弁護士が懲戒請求を受けると弁護士会の移動は、判断が下るまでできません。弁護士法人の場合、別会社作って、元の法人をトカゲのしっぽの如く、切り捨てます。
 確かに、弁護士会の懲戒制度も、いろいろ問題あるのは、確かだと思います。
 しかし、このような「身代わりの術」を許したのでは、弁護士会の自治、自浄作用が失われ、只でさえ、弁護士の信用力が落ちている中、更なる信用の失墜を招くと思います。
 私は、声を大にして、ぼやきます。弁護士業界の為にぼやくのです。「こんな身代わりの術使って、あーそうですか?と諦める弁護士会と違いますよ。次は、身代わりの術使ったとして、退会処分となりますよ。沢山の従業員、勤務弁護士、路頭に迷わすのですか? 懲戒請求に対しては、正面から反論をすべきでしょう。どういった意図で身代わりの術使ったのでしょう、責任者出てこい!」

開幕延期(2020.3.13)

このコーナーでは、阪神タイガース所属選手の契約交渉代理経験が豊富な黒田弁護士が、阪神タイガースやプロ野球に関する小ネタをご紹介しています。
さて今回は・・・。

開幕延期

コロナショック、日本のみならず、世界を揺るがしています。
いつかは、出ると思うのです。いずれかの球団で、選手、あるいは、球団職員の感染者が。そうなると、全てがストップです。
オリンピックも心配です。仮に、このコロナウィルス暑さに弱いとして(暑さに強いとも言われていますが…)、オリンピックの時、南半球では、このコロナウィルス猛威を振るっていることになります。
 パニックになっていけないと思いますが、このままでは、エンターメント系のビジネス、悲惨なことになってしまいます。
 早く終息することを祈ります。

法科大学院は、果たして必要か③ー文部科学省の毒ー(2020.3.3)

前回(法科大学院は、果たして必要か②-杓子定規②-)は、アメリカと日本の違いや、結局のところ、法学部が有利などといった話を書きました。今回は、「毒」をテーマに書きたいと思います。

ロースクールという「毒」

文部科学省は、厄介なお役所です。学校行政全般を管轄しますので、膨大な権限と人員、予算をお持ちです。
それに比して、法務省は、省庁としては、とても規模が小さく、予算も文部科学省とは比べものになりません。裁判所も同様、人員、予算、しれています。
 曲がりなりにも、司法試験が法務省と最高裁判所で運営されていた時代は、法曹界の合理性を有した、司法試験運営がなされていたと思います。
昔は、法曹の人材輩出に大学が大きな役割を果たしていたことはありました。ところが、司法試験受験業界が、法学部を無視した司法試験予備校主流となり、文部科学省としては、面白くはありません。司法改革の名目の下、に文部科学省がロースクール構想を打ち出しました。当時、司法試験の難化で、合格者の平均年齢が高齢化し、検事や裁判官など、やはり年功序列がすわりがいいお役所は、文部科学省とタッグを組み、ロースクールという「毒」を受け入れる事で、若年者の合格率をあげ、若い検事、裁判官の確保を図ることにしました。
文部科学省は、管轄する大学に対して「毒」を呑むことを強要しました。
結果、法科大学院は、どこも大赤字です。少ない学生に、多くの教授陣を充てなくてはなりません。今まで述べてきたように、学生も法科大学院構想という非現実的なものに、時間とお金を浪費することを強いられています。検事、裁判官の採用にしろ、合格者のレベルの低下から、人材育成に苦労しています。多くの者に「毒」強要したのです。
 そんな、文部科学省に反旗を翻すが如く、受験生は、文部科学省の管轄外の予備試験合格をめざし、法曹実務界も、ロースクール出身者よりも予備試験合格者を優遇します。
 文部科学省は、ボロボロの法科大学院制度に、継ぎ接ぎに、継ぎ接ぎを繰り返し、なんとか、制度維持を図ります。矛盾だらけで、法科大学院制度があればそれでいいという感じです。官僚は、一度、つかんだ利権を手放すことはありません。それが官僚の習性です。

危うく「毒」を呑まされるところでした

 昨年末問題になった大学入試、英語外部委託試験問題も、結局、運用開始直前で、世間から大バッシングを受けて、延期となりました。官僚は、権力をかざして、大学、高校、受験生にもプレッシャーをかけ、おかしな制度を強行しようとしていましたね。
 危ないところでした。「毒」を呑む直前で、手から毒杯が払い落とされた感じです。文部科学省大臣様、よくぞ、「身の丈」発言してくれました。あれがなければ、官僚の筋書きどおりになっていました。迷政治家のお陰です。
 他方、法曹業界は、文部科学省の「毒」が回って、現状、無茶苦茶です。なんとか、旧試験体制に戻すことはできないのでしょうか。合格者増で対応できるはずです。
 しかし、学校と違って、法曹界は、世間から遠く、なかなか世論での変革は難しそうですね。しかし、司法は、国民の生活の安全弁です。世間の皆様、どうか身に迫っている危機を感じて下さい。