前回は、計算方法について述べましたが、事業所得者にとって計算する証拠となる収入を証明するほうが、大変なことではないでしょうか。
そこで、今回は、収入証明とはどのようなものか、又、証明ができない場合はどうすればよいかについて述べたいと思います。
収入証明
自賠責保険の場合、税務署の受付印のある確定申告書の控え、報酬・料金・契約金及び賞金支払調書等を収入証明としています。
立証資料の提出がなされない場合でも、被害者関係先に照会し、休業により当然収入に減少を来すことが推定出来る場合は、定額の日額 5700 円を認定します。
収入証明が不能の場合
では、前年度の所得証明が提出不能の場合はどうすればいいでしょうか。
被害者が自営業を開始後、1 年未満に事故により受傷し、事故前年度の所得証明が提出出来ない場合は、
この間の収支明細の提出を求め、信憑性ありと判断が出来る場合は、立証資料に基づき、認定がなされます。
確定申告控の提出がない場合は、下記の必要経費率で控除されます。
年収200万円未満の場合 → 必要経費率は考慮しません
年収200~400万円未満 → 年収に対し20%の必要経費率を控除します
年収400~600万円未満 → 年収に対し30%の必要経費率を控除します
年収600万円以上の場合 → 年収に対し40%の必要経費率を控除します
上記計算式では、年収の多い者が必要経費を控除した結果、年収の少ない者の年収を下回る可能性が考えられます。
そこで、必要経費控除後の金額を、
年収 200~250万円は200万円とする。
年収 400~457万円は320万円とする。
年収 600~700万円は420万円とする。
と、定めています。
事故による怪我を患っているため全面休業又は閉店している場合は、
確定申告書控による所得金額に、租税公課、損害保険料、減価償却費、地代、家賃の固定費部分を加算したものを基準に休業損害を認定します。
症状固定後の逸失利益の算定では、固定費部分が加算されることはありません
事業所得者の休業損害の必要経費の算出方法
事業所得者の休業損害は、「税務署の受付印のある確定申告の控え」もしくは「信憑性のある収支明細書」に基づいて算出されています。
信憑性のある収支明細とは、専門家(税理士等)が作成した総勘定元帳などの経理帳簿のことです。
売上等を市販のノートやメモに書きなぐったものは、例え真実が記載されていても、信憑性があるとはいえません。
そのため、保険会社から依頼を受けた税理士事務所に、それらの関係資料を提出しても、直ちに「信憑性がない」と判断されてしまいます。
もし仮に、保険会社が依頼した税理士を信頼して、立証資料を提出し、期待を胸に待っている被害者の方がいらっしゃるのであれば、お気の毒ですが、残念な結果が待っていることでしょう。
正規に作成された経理帳簿と預金通帳等による裏付けが完成すれば、それが、例え申告額より高額であったとしても休業損害として認定されるのです。
この傾向は裁判でも同じですから、きちんと理解しておいたほうがようでしょう。