前回事業所得者の計算方法を述べましたが、事業所得者といっても職種も様々あります。
前回の計算方法に当てはまらない場合も考えられます。
そこで今回は、各々のケースについて、述べたいと思いますので、自分はどれに当てはまるのか、参考にしてください。
青色申告事業者の場合
青色申告事業者の計算は以下のとおりです。
計算式≫(確定申告額の所得金額+青色申告特別控除額)÷365日
青色申告による税法上の所得計算=総収入額-必要経費-青色申告特別控除
実質所得は、所得金額に青色申告特別控除を加えた金額となります。
青色申告特別控除は、正規な簿記の原則で記録されていれば、55万円、簡易簿記であれば、 45万円が控除額の上限額となります。
実務上の控除は、不動産所得の金額→事業所得の金額の順序で控除がなされます。
上限額55万円を控除された被害者に不動産所得による10万円の控除がなされている場合、不動産所得は不労所得との考えから、55万円-10万円=45万円が所得金額に加算され、所得金額+ 45 万円÷ 365 日=休業損害日額となるのです。
白色申告事業者の場合
白色申告事業者の計算は以下のとおりです。
計算式≫確定申告書の所得金額÷365 日=(収入金額-諸経費)÷365日
白色申告事業者で家族専従者がいる場合
白色申告事業者で家族専従者がいる方の計算は以下のとおりです。
計算式≫(確定申告書の所得金額+専従者控除額)×寄与率÷365日
=(収入金額-諸経費)×寄与率÷ 365 日
もしくは、
確定申告書の所得金額÷ 365 日
上記のいずれか有利な方法を採用します。
白色申告は、事業主の実質所得に専従者の労務の対価が含まれていると考えられるのです。
白色申告の専従者控除は、専従者に支払われた給与と理解するのではなく、所得額計算上の単なる特別控除に過ぎないとされているのです。
生命保険の外交員等の場合
生命保険の外交員や、化粧品のセールスマンなどの計算は以下のとおりです。
計算式≫(報酬・料金・契約金及び賞金の支払調書-必要経費)÷ 365 日=休業損害日額
報酬・料金・契約金及び賞金の支払調書は事故前年度のものを勤務先から取付けます。
休業日数の認定ですが、生命保険外交員は自由業者の範囲に含まれるのですが、
実態は給与所得者と同様の勤務内容であるところから、休業損害証明書をもとに休業日数を認定します。
個人タクシーの運転手の場合
個人タクシーの運転手の計算は以下のとおりです。
計算式≫(休業損害証明書に記載された営業収入つまり、水揚げ額-必要経費)÷90日
確定申告書の写しが提出された場合は、それに基づいて算出します。
個人タクシーの大部分は協同組合に加盟しています。
組合は、個人タクシーが休業した場合の都道府県知事に対する届出や所得申告等を代行しています。
従って、これらの資料に基づき組合が発行する休業損害証明書は、信憑性のあるものと判断がなされます。
個人タクシーは事業所得者となるのですが、上記のことから、休業日数は組合の作成した休業損害証明書に基づき、給与所得者と同様に認定がなされるのです。
協同組合に非加入の場合は、確定申告書の写しの提出等、信憑性のある資料の提出を求め、事業所得者の方法で認定します。
組合の加入・非加入を問わず、寄与率は 100 %の取扱いです。
全建総連組合員の場合
全建総連とは全国建設労働組合総連合のことです。
大工、左官、その他の建築職人さんが加盟しています。
こちらも組合の全建総連各支部代表者名で休業損害証明書が発行されますので、これに基づいて休業損害が認定されます。
但し、こちらの組合はアバウトな団体です。
組合員の利益を最大限に評価しますので、個人タクシー協同組合ほど信憑性がないのです。
従って、稼働日数や支給金額に疑義のある場合は、被害者の組合加入年月日、作業日誌、出面帳、収支明細書、確定申告書写し等の提出を求め、実態の把握を行うと但書がなされています。
その他、代替労力の場合
被害者本人が働かなくても、営業が可能な場合があります。
例えば、クラブやスナックのママなどです。本人がいなくても、代替で十分営業ができます。
しかし、代わりに雇っているため、新たな人件費が発生します。これが、代替労働となります。
この場合、認定される金額は被害者の収入や職種から見て、「必要かつ妥当な実費」これが認められます。
被害者の収入を超えて代替労働が支払われている場合でも、その必要性があれば、休業損害上限額の範囲内、つまり、19000 円以内で認められます。
尚、代替労働が認められた場合、被害者に休業損害は発生しませんので、注意が必要です。