こんにちは、弁護士の内堀です。
今日は、交通事故被害者の方が個人事業主である場合の「休業損害」について考えてみたいと思います。
個人事業主が交通事故に遭ったら
個人事業主が交通事故に遭い休業せざるを得なかった場合、保険会社は、被害者の確定申告書の「申告所得額」を基礎収入として、申告所得額÷365日×休業日数の金額を払います、というのが通常です。果たしてこれは妥当でしょうか。
休業損害の計算方法
まず、被害者としては、「売上金額」の全額を補償してもらいたいと思うかもしれませんが、これではもらい過ぎになってしまいます。休業損害は、休業したことで失った利益に対する補てんを求めるものですから、「休業により支出を免れた費用」をここから差し引く必要があります。「休業により支出を免れた費用」とは、例えば、仕入れ原価、旅費・交通費などがこれに当たります。営業活動の量に応じて変動する費用であることから、変動費と呼ばれます。すなわち、休業損害は、(売上金額-変動費)÷365日×休業日数によって算定することができます。また、申告所得額=売上金額-経費(変動費+固定経費)ですから、(申告所得額+固定経費)÷365日×休業日数で計算しても同じことです。
固定経費
固定経費の例としては、租税公課、損害保険料、地代家賃、諸会費、修繕費、リース料、減価償却費、福利厚生費などが挙げられます。これらは営業活動自体とは関係なく発生する費用といえます。
では、水道光熱費、従業員給与、接待交際費、通信費、広告費についてはどうでしょうか。これらは、一般的には固定経費とされていますが、個別具体的事情によっては争いが生じ得るといえます。
保険会社の提案に安易に乗らないでください
したがって、結論としては、休業損害に関して単純に申告所得額を基礎収入とする保険会社の提案に安易に乗るのではなく、申告所得額に固定経費分を上乗せすべきである旨をしっかり主張していくべき、ということになります。
もっとも、休業によって実際に生じた損害が立証でき、その金額の方が大きいという場合は、当然そちらを請求していくことになります。