昨日は、若き医師の悩みで専門家か万事屋かを少し論じました。
翻ってみると弁護士も同様のテーマがあります。
ただ、医師とは違って、人の命に拘わらないお金にまつわるお話がほとんどです。(無論、刑事事件や家庭内暴力の問題など、お金以外のことも弁護士の分野ですが…)
大病院があって、その中で、いろいろな科に分かれて、専門の集合体があります。弁護士業界は、そこまで細分化された事務所はありません。
特許など専門性の高い分野は、自ずから、大企業の集まる東京にニーズがあります。大阪も、大都市といえますが、東京に比べれば、田舎です。専門的な仕事の依頼がなければ、専門性を高めていくことはできません。大阪の場合、大事務所でも、やっていることは、街弁と大きくかわらなかったりします。大事務所でも、顧問料をもらって、いろいろな相談を受けるのです。
弁護士の従来の基本的スタイルは、なんでも相談できる万事屋さんです。私も、万事屋時代がありました。刑事、家事も含めて多種多様な事件をこなしてきました。特に、郊外型事務所を開設したので、当初は、街のニーズに応えるべく、奔走しました。
でも、多種多様な事件をすることの弊害もあります。毎回その分野を勉強して対応するのですが、次が無いので、知識もいつしか消えていきます。なかなか知識の積み重ねができない。忙しい割に、達成感がもう一つでした。
とあるきっかけで、交通事故後遺障害について、興味を持ち、医学的な勉強も重ねていくうち、郊外であっても専門性を高めていこうと思い、今に至っています。
万事屋から専門家に切り替えることで、最初は、受任件数が減ることになりましたが、専門性を高めることで、それなりの評判をえることができ、口コミで、地域外の方からも依頼を受けるようになりました。
もっとも、もともと、郊外型の万事屋ですので、専門外の事も、受任はしないとしても、相談を受けることはしています。最低限の街弁のお役目です。町医者の様に、重篤な病気(事件)か、そうでない病気(事件)かを振り分けます。
借金、相続、交通事故に絞ることで、スタッフも私も専門性を高めることができ、効率的な事件処理が可能です。付け焼刃的な事件処理ではないので、以前の万事屋時代より達成感はあります。さらには、超ハードスケジュールから解放され、休日も取ることができるようになり、週末、バイクのツーリングに行ったり、メリハリのある生活を送れています。
無論、万事屋での経験は、とても貴重です。交渉は、本に書いているようには進みません。あの手この手の世界、専門性か万事屋か何事もバランスが重要と思います。