今、裁判官をメインに扱った「イチケイのカラス」というドラマが視聴率好調の様です。「イチケイのカラス」は、週刊モーニングに連載されていました。そのドラマ化です。
私は、何十年も週間モーニング読者ですので、この物語は、既に漫画で読んでいます。漫画は、新米裁判官が主人公で、一見いい加減に見える弁護士出身の先輩裁判官を小馬鹿にするのですが、最後この先輩裁判官が、鋭い切り込みをし、それに対して感心するという内容で、それなりに面白かったと記憶しています。
GW中、弁護士仲間4人で見ました。医療ドラマに対して、医者が突っ込み入れるように、法廷物のドラマはに対して、我々も突っ込み入れながら楽しみます。多少の事は目をつぶり、一般の方と同様ドラマを楽しみます。
見てみると、タイトルは同じではあるものの、登場人物も含めて、内容は、全く違う別物でした。法廷ドラマというより、刑事ドラマと法廷ドラマを合体させた、我々の司法概念崩壊させる内容です。捜査した側が最終判断を下すという現代版「遠山の金さん」「大岡越前」ですね。裁判官がいきなり、「職権を発動します!裁判所主導で捜査を行います。現場検証を行います」(このドラマの桜吹雪的決めセリフ)
と言って、書記官も含めて捜査し出すことにはびっくりした。また、私が見た回では、食い逃げ詐欺事件の犯人が業務上過失致傷事件の目撃者であるという事で、併合審理にしていましたが、もう裁判官無茶苦茶のやりたい放題です。
複雑な司法手続きより、こっちの方が、単純明快で、視聴者としては、ドキドキ感があって、楽しめるでしょうね。まさか、これが司法手続きと思う人はいないでしょう。証人が、法廷で「あなたが真犯人だ!」とされるドラマのお決まりのパターンは、きっちり踏襲しており、胸がスカッとしますね。
その他、気付いた、お約束の突っ込みを列挙します。
① 東京地方裁判所の入り口の看板が、札に書かれて、ぶら下がっています。これだと昭和の職員室看板ですね。
② 裁判官室と書記官・事務室が同じ。部屋にロフト階段みたいなものがある。まるで、会社のフロアの様。実際は、裁判官室と書記官室は、別になっています。勿論、部屋の中に階段などありません。
③ 合議に、書記官や事務官も加わって自由に意見を言っている。裁判官の合議に書記官や事務官が参加することはできません。
④ 法廷に窓がある。法廷に窓があると脱走や、凶器になるので、実際は、窓はありません。
⑤ 部長が右陪席で、裁判長が若手という構図は、実際の合議体ではありません。
⑥ 書記官が事件担当外れたと言うことで、証人として出廷していましたが、「いやいや、そういうところが問題なのでは無く…」

 おかしなドラマですが、面白いので次回も見てしまいそうです。国選弁護人は、やる気がない弁護士として描かれているそうで、国選事件を熱い心でやっている友人弁護士は、「こりゃ無いよー」と嘆いていました。大阪の国選弁護人、多くの場合、すごく真面目に取り組んでいますこと付け加えておきます。

ps、堅物女性裁判官役の黒木華さんは、高槻出身で茨木の高校に通っておられました。私は応援しています。