症状固定とは、「医学上一般に認められていた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいう」(労働基準監督署文書より)
つまり、病院に通い続けてもこれ以上の改善しない状態が続くことです。
医者も症状固定とは何かをわかっていない?
症状固定時期を決めるのは、医者です。しかしながら、医者も実のところ症状固定の定義をわかっている人は少ないのが現状です。
全国の臨床医を対象にしたアンケートで「症状固定とは何だ?」と問われた際、ほとんどの医者が医学部で習っていないため知らなかったといいます。
症状固定は、いわば保険業界が作り上げた期限なのです。
保険業界もいつまでも患者に治療費を出し続けたくないばかりに、あたかも医学的に認められているかのように振る舞っているのです。
医師としては、患者が症状を訴える限り、自ら「症状固定」と言うことはありません。
なぜなら、医師としては、「治らない」と言うのは、医師自身のプライド(藪医者扱いされるのが嫌)に関わる問題だからです。また、実利的理由としては、症状固定となれば、保険会社からの治療代がもらえず(多くは自由診療で健保治療の倍の治療代)、たとえ、本人負担となっても、今までの自由診療から保険診療に変わるので、おいしい客を逃すことになるからです。
事故後すぐが、後遺症申請のチャンス!
よく、保険会社側から「医者も症状固定状態と言っているので、今月いっぱいで治療費支払立替打ち切りする」と言われた。なんとか治療を延ばして欲しいと言って相談に来られます。保険会社だけでなく、医者にも見捨てられたと嘆かれます。
通常、弁護士が入っても、治療費立替払い延長は、相当な理由がない限り保険会社は、対応してくれません。保険会社としては、別に「払わない」と言っているのではなく、「将来の解決時に必要があれば払う」と言っているに過ぎませんし、場合によれば、過失割合を考えれば払いすぎていることもあるわけで、その場合、払いすぎた分返してくれるのか?という論理です。
大抵、治療費打ち切りの相談に来られる方は、事故後相当な期間を経過している場合がほとんどで、私に言わせれば、逆に、症状固定にするのが遅すぎるという印象です。私は、一番ひどい状態の時が後遺障害申請のチャンスと考えています。
治療費なんて、保険治療をすればそんなに負担になりません。後遺障害は等級一つ変われば、100万円、数百万単位でその後の賠償額が変わってきます。
後遺症認定がこんなにも違うのです。
先日、事故で、手首、肘関節、肩関節の治療を一年半続けてこられた方がいました。
半年前では、肘関節は、ほとんど動かず、手を顔につけることはできなかった。リハビリでこれだけ曲がるようになったので、もっと続けさせて欲しいというのです。見れば、中途半端な可動域制限です。後遺障害認定(最低でも健側の3/4以下)にはなりにくいが生活には不便間違いない。1/2以下なら10級、相談者の言うとおり「ほとんど動かなかった」というのなら8級です。8級ならば自賠責保険だけで819万円下ります。実際の賠償額は、1500万円以上非該当の場合と違いが出てきます。
いつ症状固定するべきかを決めるのは、医者でも、いわんや保険会社でもありません。戦略的思考を有する弁護士の判断に委ねるべきでしょう。
※ 「症状固定したら連絡してください」という弁護士は、戦略的思考を有するとは到底言えませんね。