またまた、弁護士不祥事ネタです。それも今回のは、弁護士業界の信用を失墜させる事件です。詳しい事情は、分かりませんが、現時点の情報からこの破産の深読みをしてみたいと思います。
負債総額51億円という驚くべき巨額の負債です。銀行が、弁護士に億単位の融資をするわけがありません。勿論、この51億の数字は、自己破産ではなく、債権者申立の推定数字なので、正確な金額ではありません。しかし、おそらく、負債総額の多くは、依頼者の着手金、報酬、過払い金預かり金で、相当な金額ということではないでしょうか。
弁護士法人 東京ミネルヴァ法律事務所は、全国的にテレビCMを流して、過払い金請求、B型肝炎給付金案件を集めていましたが、2020年6月24日裁判所から破産決定が出されました。
この破産は、世間の人が思うような通常の破産ではありません。弁護士会からの弁護士会費滞納を理由とする申立による債権者破産です。
一般の人は、何が特殊なの?と思うかも知れません。普通、破産は、自分で申し立てる自己破産です。債権者破産は、債権者が財産の散逸を防ぐ為行うもので、費用は、申立人が払わないといけません。この債権者破産申し立ては、破産者の状況が全く分からないし、調査に破産者の協力がどこまで得られるか不明ですので、自己破産より高額の予納金を払わないといけません。
今回の案件は、依頼者数千人と言われています。管財人としても調査や依頼者対応にかなりの人数を確保しないといけないので、相当高額な予納金となったと思われます。
弁護士でも経営者であって、経営に失敗する人もいるわけで、弁護士の経営破綻は良くある話です(破産まで行くケースは少ないが…)。弁護士会は、何故、そこまでの自腹を切って債権者申立したでしょう。
同事務所は、どうも5月くらいから連絡が付かなくなり、弁護士会に依頼者からの相談がかなり入っていたようです。そして、6月10日「総社員」(まあ、株式会社の「株主」みたいな者です)の合意で、解散決議がなされ、登記上は、清算人として、元代表社員の川島浩弁護士のみ存在している状況となりました。
この直後から、弁護士会(第1東京)は、同事務所の依頼者への相談窓口を設け対応に当たっていたようです。
おそらく、その対応の中で、かなり酷い状況が推測される状態だったのでしょう。問題あるところが自ら情報を提供するわけはありません、破産しない以上、内部は闇のまま。このまま放置しては、被害者放置となり、被害者泣き寝入りとなります。弁護士会は、なんとか直接介入する方法を考えました。今回の申立名目の弁護士会費用滞納は、おそらく僅かなものだと思います。弁護士会は、この僅かな滞納会費を理由に、巨額の費用をかけて、債権者申立をしたのだと思います。
テレビで見た第1東京弁護士会会長は、「到底許されない」と強い口調で会見していましたが、弁護士の信用に関わる重大事件です。
恐らく、今後、破産手続きが進むにつれ、同事務所の運営実態が明らかになり、詐欺、横領等の刑事事件に発展する可能性は十分あると思います。
弁護士法人の負債は、法人の社員弁護士が無限の個人責任を負うことになります。報道によると「総社員の同意で精算」とありますので、代表の川島浩弁護士以外にも社員弁護士がいたのでしょう。同事務所の構成をみると代表で弁護士経験9年、弁護士経験の浅い弁護士も多い。(この若さで、CMで標榜する多種事件を処理できるわけ無い)
もし、若手の弁護士が就職先に困り、やっと入った事務所で、頼まれて社員弁護士になっていたとしたら、悲惨です。億単位の負債を抱えてしまうことになります。
社員弁護士でない従業員若手弁護士さんも事務所の実態を知りつつ、仕事をしていたことでしょう。場合によれば、刑事罰の危険もあります。
法律業務のプロである以上、「知らなかった」では済みません。
現在、問題のある弁護士法人が乱立している状況です。自浄作用を促すためにも、今回の事は、きっちりと処分すべき者は処分するという厳格な態度で臨んで欲しいと思います。そうでないと一般人の被害発生はもとより、新人弁護士も悪質弁護士の食い物にされてしまいます。
ホント、弁護士信用できない時代となりました。