昨年12月のブログの続きです。随分間が経ってしまいました。申し訳ございません。
アメリカのロースクール制度を日本の法科大学院として、無理矢理導入することは、変なことになること(曲がった杓子を定規として使う)について、前回、法学部が無いアメリカの大学制度の中で、ロースクールで法律を学ぶに値する人物か適正試験を法学部がある日本の法科大学院入学のセレクト材料にしたことが、馬鹿馬鹿しいことを説明しました(適正試験が廃止になるのは当然です)。

アメリカと日本の大学の違い

 今回は、大学や大学院の運営自体が、そもそも日本と大きく異なる点からの杓子定規です。
 アメリカの大学は、「入学は易しく、卒業が難しい」という話はよく聞きますね。留年率もかなりあり、何年かかけて卒業していく人も多い。日本はどうですか?大学にしろ、大学院にしろ、卒業まで、留年する人は希ですね。アメリカのロースクールの留年率はとても高いのです。大学(院)は、平気で学生を留年させるのです。
日本の大学で、進級を厳しくしたら、相当なパッシングを受けるでしょうね。私立大学などは、評判が上がるどころか入学希望者激減でしょうね。

日本の大学と学生の阿吽の呼吸

 そもそも、日本では、社会が、大学自体に期待していないのだろうと思います(医学部など一部の学部を除いて)。昔から司法試験の世界でも大学の先生に期待している受験生はいなかったと思います。卒業させてくれたらいい。単位は、全く、ゼロの人はダメでしょうが、そこそこのレベルで通す。日本では、それが大学と学生の阿吽の呼吸なのです。
 もし、法科大学院について、留年を平気でさせる制度にしたらどうなりますか?卒業後の司法試験受験の為の科目を勉強したいのに、別の科目で多額の学費を払って留年させられることの学生のストレスは相当なものです。厳しい法科大学院卒業ハードルを設けても、それが、司法試験合格に直結しない以上、入学希望者は激減するはずです。
 ですから、日本の法科大学院は、大学同様、そこそこのレベルで卒業できます。

結局のところ、法学部が有利

 当初の制度目的である法科大学院で法律実務に足りる人物の養成ということは当然にできません。文部科学省は、法科大学院の進級を厳しくするように、いろいろ制限を設けてきていますが、大学は、結局のところ、「上に制作あれば、下に対策あり」と事実上、文部科学省の要請はスルーの状態です。
 また、法学部がある日本では、司法試験が法律試験であり、一定レベルの競争にある以上、大学4年間で法律学を学んでいた人の方が、司法試験合格に有利です。8割が合格するとして、非法学部系出身者が法科大学院に入学しましたが、多く人が競争に敗れ、路頭に迷う結果となりました。当たり前です。法律の言葉に慣れるのには随分時間がかかります。それを一科目数時間で、理解し尽くせというのが土台無理な話なのです。
 法科大学院未修者コースは、実は、その多くが法学部出身者というのが実態の様です。