日弁連の会員向け雑誌「自由と正義」には、弁護士の懲戒事例が記載されていますが、4月号に興味深い懲戒事例を見つけました。

非弁屋自身が、利用していた弁護士に懲戒請求を出し、非弁提携を暴露して、弁護士を業務停止(事実上の廃業)に追い込んでいるのです。

内容を見ると、業務提携の内、約10ヶ月間の弁護士報酬3000万円の内、1900万弱を業務提携業者自身に分配したと内部暴露しているのです。別の業務提携非弁業者も、この人、ウチで、別事務所作ってるよと内部告発し、懲戒請求しています。

非弁屋は失うものはありません。巧妙に、黒幕に責任の手が及ばないように、トカゲのしっぽ切りを用意しています。「ワシに逆らったらこうなるのだ!」という見せしめです。私は、この懲戒理由内容を見て、他人事ながら、背筋が寒くなる思いをしました。

非弁屋は、寄生虫のように、獲物(宿主)の内部に入り混んだら、とことん、利用して、内部から食い尽くします。

今回の非弁提携は、「ブラック企業退職代行」です。世の中のブラック企業は、簡単に辞めさせてくれません。損害賠償を持ち出したりします。辞めたいけど辞めさせてくれないのです。ブラック企業の従業員は、気の弱い方が多く、自分で退職を強行することができないのです。そういった人を3万円〜5万円程度の比較的低額な金額でしますとネット広告で集めるのです。3万円程度で、弁護士が動いてくれるんだったらと依頼は殺到します。しかし、動くのは弁護士ではありません。非弁提携業者です。弁護士事務所の名で、ブラック企業に脅しをかけます。「ええ加減にしときや、これ以上ゴチャゴチャ言うたら、労働基準監督署や裁判所、出るとこ出で」(要はこんなニュアンスのことを固い文書で書きます)、ブラック企業は、脛に傷を持ちますから、あっさり引き下がります。電話や文書1本で事件解決することが多いのです。やってることは、ヤクザのやり方ですね。

こうして、弁護士の名を使い、金儲けします。上手くいかないパターンも、結構あります。そんな場合は、無責任に放置します。懲戒などの責任は、寄生している弁護士に負わせます。

実は、このビジネスの話、私にも持ち込まれたことがあります。それは、非弁提携業者からではなく、私が昔から面倒をみてきた青年実業家からの持ちかけでした。流石、彼、世の中のニーズを掴む感覚が鋭い。本人は、ブラック企業から弱者を守るという使命感を持っています。悪気無く、私に言ってきたのでした。このビジネスの問題点を諭し、理解して貰え、彼は、この事業には手を出さなかった様です。

非弁業者は、言葉巧みに、弁護士を誘い込みます。蟻地獄のようです。正義感に駆られて一歩踏み入れたら、もう、抜け出ることはできないのです。

世の中、非弁に食われた弁護士、司法書士のネット広告が溢れています。これを防ぐ対策なんとかしなければならないと心から思います。