10代 男性 大学生
事故態様:バイクvs自家用車


大学生がバイク通学途中、信号のある交差点を直進、青→の右折車と衝突、死亡。
判タ【187】では、基本、バイク100%の過失とされており、相手任意保険会社への請求どころか、自賠責保険も請求できず、逆に、相手からの損害賠償を受けかねない、こちらが加害者と評しえる案件であった。
 このような案件であったことから、自賠責保険の減額を少しでも減らすことを目標とした。こちらが100%ならば、自賠責支払いはゼロ、90%なら5割減、80%ならば3割減、70%ならば2割減、70%未満ならば、減額なしである。相手の過失をどれだけ構成することができるかが勝負である。
 車の運転者の刑事処分は、予想どおり不起訴処分。無論、相手保険会社も一切の賠償に応じない状況で、逆に、相手の車の損害についてどうしますか?と聞いてくる次第。
 実況見分調書を取り寄せ検討。検事にも説明を求めた。相手は、急いでいたこともあって、対向車線の自動車が信号の為停止したことで、すぐに、右折したことが予想される。バイク赤信号侵入でも、相手に15%の過失を認めさせることはできる。もし、バイクの黄色信号侵入に持ち込めれば、相手に30%超の過失を構成できる…。複数の目撃者の実況見分調書を見ると、事故の瞬間自体を目撃した人はいない。
しかし、衝突時、他の車は停止していた等、不利な材料が目立つ。しかし、ぎりぎり黄色侵入を構成しえなくもない(黄色でも車は停止する)。色々考えられる構成を駆使して、自賠責請求したところ、なんと、減額無しの満額支給となった。
 これにより、対保険会社との物損交渉においても、相手の車の修理代を放棄させることに成功。「多少なりとも過失がある若者の死亡事故、理屈はともかく、心情的に損害請求するってどうよ?」という法律論を離れた交渉が功をなす。
 保険会社これを受け入れた。最後に、保険会社担当者から、「先生、この案件、よく、減額ゼロに持ち込めましたね。ウチもこのような案件の時、先生に依頼しようかな」とのお褒め(嫌み?)のお言葉を頂いた。毎回、こんな事ができるとは限らないであろうが、苦労が報われた案件であった。