50代 会社員
受傷部位:左脛骨高原骨折etc
獲得等級:14級9号


高圧ポンプを使用してのマンションの配管を洗浄中、高圧ポンプを搭載車両からのホースが道路にはみ出し、その道路を通過中の自動車がホースを引っかけたまま進行し、作業を見守っていた被害者が、高圧ホースに足を巻き込まれ、建物に強く、弾き飛ばされるなどして、左脛骨高原骨折の傷を負った事案です。
本件注目すべきは、洗浄作業車は、全く、動いているわけではなく、ホースが道路上にはみ出していただけの場合、自動車事故として扱うか問題となるも、自賠責保険がこれを認めたことです。
 当職受任時、ホースを引っかけた運転者とホースを道路上にはみ出させていた業者が互いに責任を押しつけている状況で、被害者は、入院治療費も払ってもらえず、事実上、放置状態にあり、当職に相談がありました。
 入院先の病院への出張相談の後、受任しました。ホースを引っかけた側の運転者は、保険対応にする気もない強気の状況。洗浄作業者側は、保険対応していたが、保険会社は、責任について、消極的な態度でした。
 保険会社が窓口であったので、保険会社の体質からして、自賠責保険が認められれば、自動的に自動車事故として対応することが期待され、自賠責保険に自動車事故で認めさせることから攻めることにしました。
自賠法2条2項は、同法にいう「運行」について、「人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。」と定義していますが、判例は、停車中のクレーン車のクレーンによる事故も「自動車を当該装置の用い方に従い用いること」とし自動車「運行」と認めています(最判昭和52・11・24)。判例は、自動車という走行装置に限らず、クレーンという自動車に固有の装置をその目的に従って使用する場合も含むという見解に立っているのです。
高圧ポンプ車のホースも、高圧ポンプが車体に固定されて取り付けられている車ですから、この論理が成り立つはずです。自賠責に事前認定を求めたところ、これを肯定する回答がありました。ホースの操作により、直接怪我が発生したのではなく、第三者の車がホースを引っかけるという原因で事故を引き起こしたのであり、微妙な案件でしたが、これが肯定されたことにより、高圧ポンプ車の保険会社が全面的に対応してくれることになり、その後の治療はスムーズに進みました。
ところが、後遺障害認定には、苦労を要しました。治療の経過自体は良かったのですが、膝の曲げる時の痛みが残る状況でした。なのに、医師からは、早々と治療終了を言われてしまいました。このまま治癒扱いされるのには納得いきません。なんとか最後に…と、MRI撮影をお願いしたところ、MRI上顆間突起骨折で有ることが判明、靱帯の部分損傷も疑われる状況で、治療の継続がなりました。結果、後遺障害14級9号を獲得しました。
加えて、高圧ポンプ車とホースを引っかけた車の2カ所から自賠責保険金を獲得できたので、任意保険会社としては、その分負担が軽くなり、14級9号の認定水準からは、異例の高額での示談が成立しました。
ポンプ車のホースによる事故というとても印象に残る案件でした。私自身の満足度は高く、依頼者には大変感謝して頂けました。