自保ジャーナル No.2163 159頁 令和5年9月6日判決

【事案】
子供の妻Z名義の車を運転していたYが、横断歩行中のXに接触し、Xが転倒負傷した事案。
保険会社にY加入の保険「他車運転特約」を以て、賠償金を払うように求めた事案。

Yは、長期にZから借りていたものであり、「他車」性を否認して、保険会社は、支払いを拒否。

その根拠として、Y保険会社から求められた「他車運転転貸与証明書」にZの1年弱前から貸していたとの記載がさなれていた。

Yは、それは、虚偽であり、実際は、一月前であったと主張していた。

【裁判所の判断】
Z名義の自動車は、Yが常時使用する自動車であり、「他の車」に該当しない。

Yの主張は、保険金の対象外となることが言われてから主張されたものであり信用ならない。


【考察】
他車運転特約には、注意を要します。他車運転特約は、他人の車を借りて乗っていたときに事故があった場合に自分の車の保険を使える特約です。

ここで、「他人名義の車」ならばいいんだと思ってはいけません。そんなことを許したら、リース車も名義はリース会社です。複数車を有していて、一台分の保険で他車両の場合にも使えることになってしまいます。

そうなると保険会社大損害です。あくまで、自分の(使用する)車は、全て、一台一台きちんと保険をかけなさいというルールです。おそらく、Zさんは、もしかすると「転貸与証明書」とあるので、転貸期間長い方がいいと思って、長めの期間の記載をしたのかもしれません。本当は、Yさんの言うとおり一月前だったかもしれません。

ただ、たとえ一月前であっても、長期間貸すつもりだったならアウトでしょう。あくまで「代車」程度の短期間での借り受けでしかダメなのです。

他車運転特約には、いろいろ除外事由も明記されています。ご注意ください。

妻や同居の親族名義の車もアウトです。その車にきちんと保険をかけていれば、その保険で配偶者、同居の親族の事故カバーできます。

注意するべきは、駐車・停車中の事故は除外されていることです。例えば、駐車場で、ドアを開けて隣の車に傷つけても保険会社対応してくれません。運行供用の場合に限ります。