丁字路交差点を横断しようとしていた被害者と、同交差点を直進していた加害者車両が衝突した事故

  • 事故態様:(被害者)歩行者  VS (加害者)自動車
  • 過失検討:被害者過失15%

(事故現場図)
自保ジャーナル2039号121頁参考図

(参考文献)名古屋地方裁判所(平成30年11月14日判決)自保ジャーナル2039号121頁より

弁護士の研究結果

  1. 詳細な事故現場の見取図は不明だが、おそらく判タ類型【36】が妥当し、原則として被害者にも15%の過失がある。
  2.  裁判所は、最終的に15%の過失を認めているので、結果的に基本過失どおりとなったが、結論に至るまでに諸々の修正が加えられている。
    まず、本件は午後9時に発生しているため、夜間修正が妥当しそうだが、現場付近は電灯が点いていて、被害者を容易に発見できたのだからこれを修正していない。また、被害者は73歳の高齢であったため、高齢者修正として-5%が妥当する。(ここまでは、判例タイムズの表どおり)
  3. 本件のポイントは、裁判所が「横断歩道によらずに横断」していた原告の落ち度を重視している点。
    本件交差点から30メートルほど離れた場所に横断歩道が設置されている。横断歩道の直近というには10メートルが1つのメルクマールなので、本件は横断歩道直近とは言えない。
    他方、本件事故現場にバス停がありそのバス停を利用するには30メートル離れた横断歩道を利用することが想定されているようである。逆に言うと自動車側は、横断歩道を利用せずに横断する人がいるとは通常想定しにくいようである。
    このような交差点の構造を念頭に、通常であれば横断歩道を利用するところ、本件被害者は横断歩道を利用することなく危険な横断をしているため「横断禁止の規制あり」に準ずる落ち度があるとして、被害者に+5%修正を加えたものと思われる。