視覚障害者の運転する車と自転車の衝突事故

  • 事故態様:(被害者)自転車 VS (加害者)車
    信号交差点の横断歩道を走行していた自転車が、左方から進入してきた視覚障害を有した加害車両に衝突した事故
  • 過失検討:被害者過失20%

(事故現場図)

(参考文献)札幌高等裁判所(令和元年9月3日判決)自保ジャーナル2058号144頁

弁護士の研究結果

  1. 本件事故は、信号交差点による自転車と車の事故で、なおかつ、自転車は青点滅信号での横断、車は青信号で進入しています。このような事案にぴったり合う類型は判タイムズには掲載されていませんが、非常に近い類型として、自転車が青信号点滅で横断、車が赤信号で進入の【293】に当てはめることができると思います。そうすると、過失割合は、10(自転車):90(車)になります。
    形式的には、自転車の青信号点滅での横断開始を重過失として+5、25mの横断歩道の長さと、被害者の股関節の持病を考慮して、それを著しい過失として、+5で20(自転車):80(車)になります。
  2. 被害自転車には、股関節の持病を持っていたことから、赤信号に変わるまでに横断できないことを自覚していたにも関わらず、横断を開始したことに過失があります。他方、加害車両の運転手は両目に視覚狭窄の障害を持っていました。この状態で運転する以上、細心の注意を払い、運転する義務があると思います。しかし、加害者はこの義務を怠り、それが原因で本件事故が発生したことから、視覚障害を煩っていたとはいえ、加害者の過失は非常に重いとし、80%の過失になったのでしょう。