驚きの判決が出ました。東電役員に対し、震災での監督責任を問うた案件で、なんと13兆円の支払いを命じる判決がでました。

この株主代表訴訟というのは耳慣れない訴訟だと思うのですが、昔から株主オンブズマン団体などが利用してきた訴訟制度です。

会社役員が会社に損害を与えた場合、会社から当該役員に損害賠償することは先ずありません。損害賠償するには、役員決議を経ることになりましょうから、身内に、損害賠償をすることはないと考えるのが普通でしょう。

では、会社は誰のものか?というと、それは、株主のものであるというのが法律上の大原則です。役員の身内での馴れ合いに対して、株主が物を言える制度が、株主代表訴訟制度です。

今回、報道ではあまり報じられていない株主代表訴訟にまつわるお金のお話をしたいと思います。

普通、13兆円の訴訟ならば、裁判所に納める印紙代は、数億円単位になります。しかし、株主代表訴訟では、金額に拘わらず、わずか1万3000円のみ。

訴えできるのは、僅か1単位株しかなくても6ヶ月株主ならできます。

しかし、株主勝訴でも、お金が入るのは、個人ではなく、会社に賠償金が入ります。

ただ、弁護士費用は、勝訴の場合、会社が払う事になっています。個人は負担する必要はありません。今回の13兆の判決で、現実に、将来、どれだけ会社に入ることになるか分かりませんが、入ってきた金額を前提に計算されるでしょうが、数パーセントは、弁護士報酬になるでしょう。もし、1兆円だと2%で200億円ですか…笑 

他方、訴えられた役員さんは、会社のお金を使って弁護士を雇えるというのかというとそういう訳にはいきません。自腹での対応しなくてはなりません。もっとも、勝訴の場合(取下を含む)、後で、会社側がそのかかった費用を払うことはできます。正当な業務に対し、不当訴訟がなされたという業務性がみとめられるからです。

こうしてみると、会社は、株主が勝てば、株主側の弁護士に、役員が勝てば、役員の弁護士に、いずれにしろ、弁護士に相当な金額を支払う必要があることになりますね。

今、中小企業の株主代表訴訟増えている様です。中小企業の社長さんなど、会社のお金を私的流用している事多いし、ワンマンで無茶苦茶な決断していることも多い。

そんなケースは、訴訟もそんなに長くならないと思います。早い段階での和解も見込めるでしょう。弁護士としては、依頼者からお金をもらわずに、多額の報酬を見込めるので、おいしい案件も多くあるでしょう。同族会社でも一人反乱株主がいればいいわけですので、訴訟のハードルは低い。

この点、保険会社もめざとく、実際、株主代表訴訟対応の保険が売り出されている様です。

株主代表訴訟制度は、会社役員の会社私物化を防ぐというプラスの側面がありますが、マイナスの側面があることに注意が必要です。弁護士のモラルが今ドンドン下がっており、お金になるなら何でもするという人も現れています。そのうち、過払いのCMに代わって、株主代表訴訟のCMが流れる日がくるかもしれません。ますます、弁護士、嫌われ者になりそうです。