大阪弁護士会の今月号の会報を見てみると、知り合いの弁護士が二人も、「〇〇の請求をこちらにするなら、▲▲の件で刑事告訴します」っていう文書相手に送って、相手方から懲戒処分の請求を受けて「戒告」の処分をうけていました。
 これは、懲戒とすべきかどうかギリギリの案件だと思います。
 確かに、これを逆説的な表現をすれば、かなり印象の悪い表現となります。「告訴して欲しくなかったら、請求取り下げろ」という事ですから。よく恐喝事件で、「出るとこ出たくなかったら(警察に通報して欲しくなかったら)、金払え。それで勘弁してやる」に近い内容となります。
 でも、実際の事件では、「警察沙汰にして欲しくなかったら、〇〇しろ」というのは、よくあるケースなのです。例えば,妻が夫に黙ってお金を使い込み、DV夫が妻を殴ったような案件なんかがそうです。
 「〇〇してくれなかったら、刑事告訴します」と言うことが使えないとなると、弁護士の仕事はとてもやりにくくなります。
 今回の懲戒事案は、①妻の婚姻費用分担請求権、②労働者の労働債権と法が経済的弱者として扱っている者の権利ですので、刑事事件をネタに経済的弱者の請求を取り下げさせる行為は、経済的強者である夫や会社の代理人弁護士として活動としては、「品位がない」として懲戒処分となっています。
 本件はどうであるか分かりませんか、実際の事案では、経済的弱者がモンスター化しているケースも多いと思います。依頼者を見捨てないという弁護士からすれば、頭を悩ませる問題です。